2018年7月18日水曜日

ブロック塾:擁壁上のブロック積み

こんにちは。古橋です。

ブロック塾 第13回目は擁壁上のブロック積みについてです。

日本建築学会規準によりますと、擁壁上のブロック積みについては次の様な規定があります。

擁壁の高さ【A】が1m以上ある場合は、ブロック塀の高さ【B】は1.2m以下。
擁壁の高さ【A】が1m未満の場合は、ブロック塀の高さ【B】は2.2m−A以下。
いずれも擁壁の中に鉄筋の直径の40倍(最低でも40cm)縦筋を定着すること。

となっています。

仮に既存の擁壁が2mあった場合、その上のブロック塀は1.2mまで積めるので、下部地盤からみると3.2mになってしまいますが問題ないのでしょうか?

とても不安です。ここからは私の個人的な考えになりますのでご了承下さい。

イラストのような重力式擁壁であればその重量と厚みからブロックの基礎としてみなしても良い気がしますが、最近の擁壁はRC造が殆どです。

RC(鉄筋コンクリート)は計算により必要最低限の断面(大きさ)で作れるので、経済的とも言われていますが、逆に言うとギリギリの断面形状なのです。

そのRC擁壁の上に40cm鉄筋を定着させ、規定の範囲だからと言ってブロックを増し積みする事はとても危険です。

擁壁の設計段階からブロック積みを構造計算に入れて基礎断面や配筋を計算されている場合はもちろん問題ありません。それでも低い地盤からの高さは2.2m以下とし、縦筋は擁壁と連続していることが絶対条件になると私は考えます。

しかし、実際の現場で擁壁の上にブロック塀を設置することは稀で、むしろフェンスを取り付けるための基礎としてブロックを1段設置するケースの方が圧倒的に多いと思います。

この場合は縦筋を擁壁の中に40cmも入れることは現実的ではないので、ホールインアンカー又はケミカルアンカーを用いて縦筋が引き抜けないよう設置し、更にブロックの橫筋にフック又はL形に折り曲げ定着させれば問題はないと思います。

ここで重要なのはただの差し筋(穴に鉄筋を刺すだけ)ではなく、力学的又は化学的にしっかりと固定することです。ホールインアンカーやケミカルアンカーは公共工事でも採用されているものなので、正しく施工すれば引き抜ける心配はありません。

そして、そこに設置するフェンス(正しくは転落防止柵)の高さは上部地盤から1.1m以上とし、人が寄りかかっても変形しないものを使わなくてはいけません。

よく見かけるきゃしゃなメッシュフェンスや縦格子フェンスは転落防止柵には認められないので注意して下さい。


それでも、擁壁の上にある程度の高さのブロック塀を施工しなくてはならない場合は、下記の様な計画をオススメします。

擁壁とは別に上部地盤に改めてブロックの基礎を造れは、従来の規定に準じてブロック塀を設置することが出来ます。

擁壁天端とブロック塀の間に植栽ができれば更に景観的にも良いと思います。

2018年7月14日土曜日

ブロック塾:控え壁の配筋

こんにちは。古橋です。

ブロック塾も12回目となります。今回は控え壁の配筋についてです。

控壁を設置するルールについては既に解説をしましたが、ただ壁があれば良いという事ではありません。

重要なのは主壁と控え壁が構造的に一体になっている必要があります。





上の図はブロックの中の鉄筋を表しています。

主壁の縦筋と橫筋を黒、控壁の鉄筋を赤く表示してあります。

控え壁の主筋は縦筋にフックで鍵掛け、逆側は直角に曲げ25cm以上縦筋と定着させます。

橫筋は両端をフックにします。

また、主壁と控え壁の接合部はこの様になります。




主壁のフェイスシャルをベビーサンダー等で切断し、控壁と一体になるよう加工します。

控え壁の厚さは主壁以上とし、空洞部には全てモルタルを充填しなくてはいけません。



今後、悪質業者が既存のブロックを一切加工せず、その横に控え壁だけを施工して、高額な請求をしてくるケースもあるのではないかと心配です。

後から控え壁を追加する場合は、既存ブロックの縦筋を露出させ、そこに控え壁の鉄筋を鍵掛けすることが重要なのです。

2018年7月13日金曜日

ブロック塾:横筋について

こんにちは。古橋です。

ブロック塾11回目は横筋についてです。


橫筋を入れる間隔は80cm以下になるよう決められています。

ブロックの高さが20cmなので最低でも4段に1本は入れなくてはいけません。


もし、ブロックの上にフェンスを立てるなど、この橫筋を連続させて設置することが困難な場合は、一段下にも連続させた橫筋を入れる必要があります。

その橫筋の端部は鉄筋の直径の25倍以上L形に折り曲げ縦筋と定着させなくてはいけません。

縦筋をつなぎ足すことは溶接以外原則禁止されていますが、橫筋の場合は鉄筋の直径の40倍以上重ねれば、現場でつなぐことが出来ます。

又、ブロックをクランク状に配置する場合は橫筋を縦筋に対してZ状に通す事で、より強度が強くなります。


これは法的な規制ではなく、現場の気配りとして必要な事です。

2018年7月12日木曜日

ブロック塾:縦筋について

こんにちは。古橋です。

ブロック塾第10回目は縦筋について詳しく解説をする事にします。

縦筋の配置間隔は80cm以下となっています。(赤く表示した鉄筋が縦筋です)


ブロック1本の横の長さが40cmですから、ブロック2本に1箇所の間隔で縦筋が入ります。

この縦筋の太さは直径10mm以上となります。

但し、控壁がなく1 . 2mを超え1 .  6m以下の壁(門袖壁など)の縦筋は40cm間隔で入れるか、鉄筋の太さを13mmとして80cm間隔で入れなくてはいけません。

又、前回ご紹介した控壁の機能を持たせた門袖壁で、高さが1.6m以下の壁は従来どおり10mmの鉄筋を80cm間隔で配置することが出来ます。


この縦筋の先端は壁の一番上に配筋されている壁頂筋という横筋に確実に定着させることが強度上、最も重要となります。

そのために縦筋の端部を壁頂筋と平行に、鉄筋の直径の10倍(10d)以上曲げる【A】か、フック状に曲げ余長を鉄筋の直径の4倍(4d)以上伸ばさなければなりません。【B】

実際にはブロックの穴の中に入るように鉄筋をフック状に曲げるのは大変なので、L形に曲げる事が多いと思います。

しかし、端部の加工をせず切りっぱなしで終わらせること【C】や、縦筋を途中で繋ぐ【D】ことは絶対にしてはいけません。 (縦筋同士を溶接にて繋ぐことは認められています)



また、基礎の中の配筋についても注意して下さい。


縦筋をL字に曲げて、基礎主筋と配力筋の下側に入れること。

下地砕石からスペーサーを入れて「かぶり」を確保する事などがポイントです。

コンクリートの「かぶり」とは鉄筋端部からコンクリート表面までの距離の一番狭いところの寸法をいいます。


このかぶりが浅いと、そこにクラック(ひび割れ)が発生してしまいます。

するとそのクラックから毛細管現象で鉄筋のまわりまで水が侵入し、鉄筋にサビが発生します。


鉄筋が錆びると断面が細くなり、コンクリートの引張強度を補うという、鉄筋本来の役割を果たせなくなってしまいます。

ちなみにかぶりの最低寸法は部位によって異なります。

基礎のスラブ:60mm以上
基礎の立上り:40mm以上
ブロックの壁内:20mm以上

この違いは水に永く触れる可能性があるかどうかということです。

これらの事を十分理解して縦筋の設計、施工を行ってください。


2018年7月11日水曜日

ブロック塾:基準法に適合する袖壁パート3

こんにちは古橋です。ブロック塾9回目も建築基準法に適合する袖壁のデザインです。

今更ですがブロック塾をまとめてご覧になりたい場合は、右側のラベルにある「ブロック塾」をクリックして下さいね。

さて、今回はこの様なデザインを解説致します。


ちょっと複雑ですがこちらも建築基準法に適合しています。

【A】の壁は前回同様標準的な袖壁の高さ1.5mとします。

ポストの裏箱や、宅配ボックスを隠すためにアプローチ側に控え壁【B】を40、60、80cmを目安に設置します。

【A】の壁の長さが80cmを超える場合は控え壁【C】を【A】と同じ高さにするか、最低でも1.1mの高さで設置します。

もしその控え壁の先に【A】の壁が突出する場合、その長さは80cm以下として下さい。
もちろん突出させなくても大丈夫です。

【C】の壁(控え壁)を45度の角度で設置する場合は最低でも60cm突出させる必要があるので、主壁を道路境界より60cm以上セットバックさせれば問題ありません。

ちなみに45度の斜距離600mmを確保する為のセットバックの最低寸法は次の様に計算します。

600 ✕ Sin45° = 424.3mm(小数点以下第二位四捨五入)

三角関数が苦手という方もいると思いますが、例えばiPhoneの電卓を出し横向きにすると関数電卓に変わるので45と入力した後、「sin」と書かれたボタンを押し、出た数値をそのままにして「✕(かける)600」と打つと424.2640687119285と出ます。

つまり、道路境界線から主壁を430mm以上セットバックさせれば、45度で長さ600mmの控え壁を入れる事が出来るということです。

又、【C】と【D】の壁は高さが1.1mなので控壁が必要ない為、壁の長さに制限はありません。

いかがでしょうか?このように学会基準や基準法をベースにした上で、ボリューム感とリズム感のある袖壁のデザインを心がける様にして下さい。

2018年7月10日火曜日

ブロック塾:基準法に適合する袖壁パート2

こんにちは古橋です。ブロック塾第8回目は前回に続き建築基準法に適合する袖壁のデザイン パート2です。

今回は具体的な寸法を提示しながら解説をしてみましょう。

まずひとつ目はこのようなデザインです。


壁の形が分かりやすい様に足元の植栽は描いていませんが、実際には下草など植えて下さい。

ポストが付く【A】の壁は高さを1.5mとします。建築基準法では基礎の形状に関係なく1.2mを超えた場合は控壁を付けなくていけないのでアプローチ側に控え壁【B】を設置します。
この壁は【A】の壁の後ろに40cm以上突出させないといけないのですが、80cm以上突出させると、そちらも主壁となり更に控え壁が必要となりますので注意してください。

次に【C】の壁ですが主壁【A】より40cm下げていますが控壁として認められるので、【A】の壁は最大3.4mまで延長させる事が可能です。もちろん【C】の壁は長さが40cm以上必要です。

更に【D】の壁は高さが1.3mなので【C】の壁を控え壁とし、片側80cm以内で突出させています。

つまり、【C】の壁は【A】と【D】の壁の共通の控え壁となっているのです。

この様な組み合わせ方はどこの基準や規準にも書いていませんが、大切なのは控え壁の機能を確保しつつ、デザイン性を高めるアレンジ力だと思うのです。

(もう少し続く)

2018年7月9日月曜日

ブロック塾:基準法に適合する袖壁パート1

こんにちは。古橋です。

大変長らくお待たせを致しました。ブロック塾第7回目は建築基準法に適合する袖壁のデザイン パート1です。

今までは「建築基準法」及び「日本建築学会規準」のやや硬い解説になりましたが、今回はその基準を踏まえて袖壁をどのようにデザインしたら良いかという実務的なお話しです。

まずは良く見られるこのような袖壁です。


インターホンのカメラの高さはG.L.+1.3mが標準なので、壁の高さは1.5m程度になります。学会規準だとL形または逆T形の基礎であれば控え壁の要らない高さとなりますが、建築基準法では控え壁を付けるよう指導されることになります。更にポストの裏箱も横から丸見えになってしまうので、あまり美しくありません。

そこで私がお薦めするのはこんなデザインです。


控え壁をアプローチ側の後ろに設置する事で建築基準法に適合させる事が出来るばかりでなく、ポストの裏箱も隠せる訳です。
但し、正面のポストが付いている壁の長さは80cm以下にしなくてはなりません。(控え壁から突出した壁の長さは80cm以下ルール

正面の壁が80cmと狭いのでポストと表札だけとし、側面にインターホンを設置することで控え壁感を緩和することができます。

更に今注目されている宅配BOXをポストの裏箱の下に設置すれば完璧でしょう。

もし、正面の壁を80cm以上にしたい場合は、控え壁を2箇所に設置しなくてはなりません。
その時はこんなデザインにしましょう。


凹凸感が分かりやすよう壁を付けています
こうすればポストの付いている壁の長さは最大3.4mまで伸ばす事が出来ます!
控え壁は主壁の片側に設ける必要はなく、前後に設置することも可能なのです。

(次回に続く)


2018年7月8日日曜日

ブロック塾:控え壁の設置基準

こんにちは。古橋です。

ブロック塾の6回目は控え壁の設置基準についてです。

テレビや新聞でも取り上げられているお馴染みのこの絵を使って解説をして参ります。



まずは控え壁の設置間隔【A】についてです。
控え壁と控え壁の間は最大で3.4mとなっています。
しかし、実際には3.2mで設置される事が多いのです。
その理由はブロックの縦目地に控え壁を設置すると配筋がしやすい事と、ブロックの横寸法が40cm(目地中心の寸法)なので、ブロック8本毎に控え壁を設置するからです。

ここで注意したいのは壁の長さが3.4m以下であれば控え壁を設置しなくても良い!
という事ではありません。控え壁は高さが1.2m(学会規準では1.6m)を超えたら、壁の長さに関係なく控え壁を設置する必要があるということです。

次に控え壁の長さ【B】についてです。
控え壁の長さは片側に設置する場合は40cm以上(ブロック1本分)と定められています。

又、あまり実用的ではありませんが、両側に設置する場合は、片側20cmずつとする事も可能です。


いずれも主壁に対して直角(90°)に設置をする事が基本となりますが、左右に45°の範囲であれば斜めに設置する事も可能です。


但し、この場合控え壁の長さは60cm以上となりますのでご注意下さい。

控え壁を45°に付ける事もあまり無いと思いますが、門袖のデザインとして活かすと意外と効果的です。

次に【C】の寸法です。
控え壁の高さは主壁と同じか最大でブロック2段まで下げる事が可能です。
寸法で言うと40cmです。基準では500mm以内とされていますが、こちらもブロックの寸法を考えると40cmまでとなります。ブロック塀に水平荷重(地震や風、衝撃荷重)が掛かった場合、モーメントで考えると壁の根元に最も負荷が掛かり、壁の上部には負荷があまり掛からないからだと思います。

最後に【D】の寸法です。
Dは最後の控え壁から突出した主壁の長さという事です。
こちらは80cm以内と決められています。
この部分が80cmを超えた場合は更に控え壁を設置する必要が生じますので注意して下さい。



この様に控え壁の設置基準についてはかなり細かく決められているのです。

では、これらの厳しいルールに則ってポストやインターホン、表札などを設置する袖壁はどのようにデザインしたら良いのでしょか?

次回はその辺りについて解説をしたいと思います。